推しキャラはもはや産みたい……!「なりチャ」「タカミン」懐かしワード飛び出した、パカチャン×801ちゃんのアラサー腐女子対談

取材・文/近藤世菜
編集/阿部栞
ぶっちゃけ、オタク歴何年ですか?
アラサーオタク女子のみなさんのなかには「あれ、もう20年くらい経ってるかも……」と自分のオタク歴の長さにびっくりする人もいるかもしれません。今この瞬間の萌えを楽しんでいるうちに、意外と長い年月を積み重ねているんです。
そんな長年のオタク人生。このあたりでちょっと振り返ってみるのもおもしろいかもしれません。そこで、アラサーオタク女子の代表として、pixivコミックで『だからオタクはやめられない。』を連載中の漫画家・パカチャンさんと、彼氏視点で腐女子の生態を描いた小島アジコさんの漫画『となりの801ちゃん』の主人公、801ちゃんをお招きして対談企画を実施!
もともと親交が深いというおふたりに、かつてドハマリしていた作品や、なつかしのオタクあるあるについてアツく語り合っていただきました。
※ この記事には、二次創作やBL関連の話題が多分に含まれています。苦手な方はここでバック! どんとこいという方だけ先にお進みください。
ハマり倒した『るろ剣』『封神』、怪物級の『テニプリ』。オタク女子の90年代はジャンプ全盛期!
── はじめに確認ですが、おふたりはオタク歴が長め、かつ腐女子ということで間違いないですか?

パカチャン:はい!

801ちゃん:その通りです!
── ありがとうございます! 今回は、90年代から現在までを振り返って、とくに人気のあった作品を表にまとめてきました。この表を見ながらおふたりのオタク遍歴を振り返ればなと思います。

── まず、オタク活動を始めるきっかけとなった作品について教えてください。


私も『るろ剣』だな。大体みんな同じものにハマるんですよ。

▲ パカチャン『だからオタクはやめられない。』P.30より

90年代はとにかく、ジャンプ連載の人気がすごかったですね。『るろ剣』、『SLAM DUNK』(以下『スラダン』)、『封神演義』(以下『封神』)、『HUNTER×HUNTER』、『ONE PIECE』『テニスの王子様』(以下『テニプリ』)って。みんな、ひと作品ごとにそれぞれ推しカプがいましたね(笑)

私は『るろ剣』に操を立ててたので、『スラダン』は読んでなかったんですよ……。連載時期がけっこうかぶってて。それで、その後『封神』にハマってから頭がおかしくなりました(笑)
── 「頭がおかしくなる」とは、具体的にどんな感じなんでしょう……?

私の推しカプは師弟関係にあったんですけど、公式の中で師匠が弟子のために宝貝を遺して死んでしまって……。その後何年間もジャンプを開けなかったんですよ。ショックすぎて、もはやジャンプのない世界に行きたかったんです……。
── それはたしかにすごいハマりようですね……! いろいろな作品の名前が出てきましたが、とくに同人界隈に影響を与えた作品ってありますか?

いろいろありますけど、私の世代ではやっぱり『テニプリ』。あの人気はすさまじかったです。

コミックシティのとき、あまりの人数にインテックス大阪の『テニプリ』の入ってる館がいっぱいになって、完全入れ替え制になってたくらい。
── 『テニプリ』がそこまでオタク女子に人気になった理由って何なんでしょうか?

キャラクターの掘り下げ方がすごい! ファンブックにキャラクターの基本的なプロフィールだけじゃなくて、視力や靴のサイズまで載っていて。あと個人的には……、跡部様の間口が広すぎる気がします……! 言動が面白いイケメン奇抜キャラかと思いきや、プレイが堅実でかっこいい。魅力が多すぎて、気付くとみんなうっかり虜になっている(笑)テニプリの魅力をわかりやすく体現しているキャラクターだと思います。
── たしかに、オタクじゃない人のなかにも『テニプリ』は知らないけど跡部様は聞いたことあるって人けっこういます(笑) 同人界隈でもいまだに人気が高いジャンルですもんね。

人気が長続きしてるって話で言うと『忍たま乱太郎』(以下『忍たま』)ってすごくないですか? アニメ化されてからもそうだけど、原作の『落第忍者乱太郎』の頃から同人やってる人がいるんだもん。

はじめは登場人物が少なかったから、人気のあるキャラクターも一年生か、先生か、エリートかってくらい偏っていたけど、たくさん上級生が出てきて、さらに人気が出てきたよね。

『忍たま』は、なんとなく7年周期くらいで盛り上がってた気がするんだけど、今は常に一定の人気を確保してる感じだね。
「なりチャ」って覚えてる? SNSがない時代の"オタクコミュニケーション"

── いまでこそpixivやTwitterで、二次創作とかBLに触れる機会って身近にあると思うんですが、おふたりが学生の頃ってどうやって作品を漁ってたんですか?

少ないお小遣いを投じて本を買い集めてました。当時はアンソロジーがけっこう書店に並んでて。

ネットが主流になってからは、一生懸命推しカプのサイトを探してましたね。好みのサイトを見つけたら、さらにその同盟リンク(※1)から飛んで、裏ページを見つけてって……。
※1 同盟リンク:同じカップリングが好きなオタクのリンクを集めたページ

挨拶文を書かないと作品が見られないサイトもあったんですよ。そのカップリングをどれだけ好きか3行以上で書かないといけないとか。

秘匿しないといけないものだって感覚だったからpixivが出てきたときは正直抵抗あったんです。そんな大々的に公開していいの!?って(笑)

今は本当にありがたい存在だよね。カプ名で検索するだけでズラッと作品が出てくるから(笑)

▲ パカチャン『だからオタクはやめられない。』p.121より
── pixivはSNSのような役割も担っていて、オタク同士のコミュニケーションのきっかけになっている気がします。ちなみに、ネットがここまで普及していない時代って、どうやってオタク仲間とコミュニケーションを取っていたんですが?

そういえばファックス使わなくなったなあ。

ファックスリレーね! やってた!

オタク仲間とファックスで絵を送り合うんです。うちは父の部屋にしかファックスがなかったから、目を離したすきに送られてきた絵が見つからないように、ずっと目の前で待ち構えてました。

うちは居間にあったんだけど、ファックスが送られてくるときは他の部屋の電話線を抜いてバレないようにしてた(笑)

いや、たぶんバレてたと思うんですけど(笑) 中学生のとき、ちょっとエッチな本を読んでるのを親に見つかって。まあ怒られるじゃないですか。でも私そのとき「これは純愛なんだ!」って熱く斜め上の反論をかましてしまい……。今、思い返して親の気持ちになったら泣かれなかったのが不思議なくらいです……!



でも実は、私「なりチャ」は通ってないんですよ。あんなヤバいものにハマらなくてよかったと思ってます。そのかわり「なりメ」(※2)は通りました……。
※2 なりメ:なりきりメールの略。特定のキャラクターになりきって友だちにメールを送り合うこと。
── パカチャンさんは実際に「なりチャ」をしていたってことですよね。よければ詳しい話を聞かせてもらいたいです……!

「なりチャ」ってつまり「なりきりチャット」のことなんですが、読んで字のごとく推しカプの受けと攻めにそれぞれなりきってチャットするわけです。


あのね「なりチャ」にもいろいろ種類があって、なんの打ち合わせもなしにその場限りのエロスを楽しむものもあれば、半年くらいかけて少しずつ作り上げていくのもあるわけよ。


もう幸せを祈ることしかできない……。推しキャラへの思いが変わってきた
── 10代の頃から20年近いオタク歴を歩んできたなかで、推しキャラやカプへの気持ちってなにか変わってきていますか?

若いころ、私は『スラダン』の流川楓が恋愛対象として好きで、夢女子だったんですね。それが腐女子などを経て…アラサーになってから推しキャラに抱くメインの気持ちが「弟にしたい」「息子として産みたい」「孫にしたい」っていうふうに変わってきましたね。

私は最近、推しキャラのエッチな話が読めなくなってきました……。いま自転車乗りの子が好きなんですけど、大事な身体に負担をかけるようなことしないでって思っちゃう。
── 深い愛情に変わってきたってことでしょうか?

もうね、私たちは彼らの幸せを祈るしかないんですよ。

そう! でも幸せを願えば願うほど、自分がハマってる推しカプって、彼の幸せを邪魔する結果になるんじゃないかって、矛盾を抱えちゃうんですよね。

わかる!
── くわしく教えてもらってもいいですか?

私の大好きな自転車乗りの〇〇くんは、いろいろ重いものを抱えてるんです。推しカプで彼は受けなんですけど、攻めの△△が果たして〇〇くんを本当に幸せにしてあげられるのかと思うと、もう居ても立ってもいられないんです……!

もしも公式で推しカプが結ばれるようなことがあれば全力で応援します。でも同時にかわいいお嫁さんをもらった方が幸せなんじゃないかと思うときがあって……。「いや、そんなふうにこの子たちの幸せの形を勝手に決めつけてはならない!」みたいな気持ちも生まれたり。

高校生カプにハマっても、彼らが社会人になってからのことばっかり考えちゃうんです。10年後、20年後も一緒にいられるんだろうかって……。

そう。若い頃は悲恋で泣いてたのが、今はふたりが幸せになっても泣けてくる。うれしさ半分、それが永遠に続くかわからない切なさ半分ってかんじです。
── おふたりのアツい思いがすごい伝わってきます。アツすぎて伏せ字でしか書けないんですが……! 最後に、今回ご自身のオタク遍歴を振り返ってみた率直な感想を教えてください。

最高ですね。まったく後悔していません。というか今も同じ世界線の上に乗ってますから(笑) これからもオタク道を邁進するつもりです!

むしろ、あのときあのジャンルにハマっとけばよかったとか、あのイベントに行っておけばよかったとか、前向きな後悔ばかりです。やっぱりオタクはやめられません!
── ありがとうございました!
オタク歴の振り返り、とにかくすっごく盛り上がる!

アラサーオタク女子なら、思わず「わかる!」「なつかしい!」と叫んでしまうような話題ばかりだったのではないでしょうか。
目の前の萌えを楽しんでいると、自分のオタク歴の長さを意識することはないかもしれません。でも、たまに過去を振り返ってみると「とにかくすっごく盛り上がる」ということが今回の対談で判明しました!
『だからオタクはやめられない。』『となりの801ちゃん+』コミックスが発売中!
今回の対談に登場してくださったパカチャンさんが描くコミックエッセイ『だからオタクはやめられない。』のコミックスが大好評発売中です!

また801ちゃんさんの腐女子的生活を描いた『となりの801ちゃん+』最新5巻も発売中です!

©小島アジコ/御薗橋801商店街振興組合/宙出版(原案キャラクター作成者/はるな)
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