“自分の気持ちに素直になること”が大事。人気イラストレーター・Mika Pikazoさんインタビュー

プロのテクニックを動画で見ながら、絵について学べるピクシブの人気サービス「sensei(センセイ)」でメイキングを公開してくださった人気イラストレーターのMika Pikazoさん。
今回pixivisionでは、彼女がプロとして活躍するまでのエピソードや、普段絵を描く上で気をつけていることなどをインタビューさせていただきました!
今ではキャラクターデザインや書籍の表紙イラストなど、多方面で引っ張りだこのMika Pikazoさん。しかし、これまでは思うようにいかなくて悶々としていた時期や、絵を諦めようとしていた過去があったそうです。
プロのイラストレーターになりたいけれど、一体何から始めていいのかわからない……そんな悩める若い世代の背中を押してくれるメッセージも盛りだくさん。ご本人の口から語られた貴重なお話をお見逃しなく!
好きなものを詰め込んだ、渾身の一枚

▲今回作成したメイキングの完成イラスト


── そうなんですね。素人目に見ると、和柄は細かいので、描くのが大変そうに感じますが、いかがですか?

──Mika Pikazoさんが絵でこだわるポイントは、やはり和柄なんでしょうか?

以前、作家・望公太先生の『アイサレワールド』(HJ文庫)という作品で、初めて書籍の挿絵を描かせていただいたことがあります。その時に、自分の描いた絵と物語の文章が一つの作品になっていくことにすごく感動して、「1枚の絵として(だけでは)終わらない作品」が描けたらな……と思ったことが、こだわりの原点にあるかもしれないです。
▲ 望公太『アイサレワールド』(ホビージャパン、2015年)
絵を描く時は、事前準備とテンポ感が大切

▲MIKA PIKAZOさんが作成した今回のイラストの構成メモ

趣味でアニメやゲームのキャラクターを描く時は、出来るだけ元のキャラクターの色使いを崩さないように意識しています。逆にオリジナルのイラストを描く時は、自分の考えている世界観、描きたい世界観を表現するために、準備段階の試行錯誤に時間をかけるようにしています。世界観を絵に投影するには、ラフにしっかり時間をかけて、全体の色合いや人物の表情のイメージを、早い段階から固めていくことが大切です。
ラフに時間をかけると、思い浮かべた世界観がブレなくなってきます。逆にラフに時間を取れなかったり、描きたいものがラフの時点でうまく固まっていないと、もともとイメージしていた絵が描けなくなってしまうんです。ラフをしっかり仕上げられたら、あとはテンポよく作業を進めることができるので、迷いなく描きたい世界を形にすることができますね。

私の場合は、音楽を聴きながら作業するようにしています。テンポのいい音楽を流していると作業もスムーズに進むので、作業を始める時はアップテンポなハウス系の音楽をかけることが多いですね。仕上げの時は、疾走感のある楽曲をかけています。Lady GaGa(レディー・ガガ)やSkrillex(スクリレックス)、他にもアニメ系の曲なんかも好んで選んでいます。ちなみに今回のイラストは和がテーマにある音楽を聴きたかったので、椎名林檎さんの曲などを聴きながら制作していました。
スムーズに……といっても、制作時間を短くするためにテンポを良くしているわけじゃなくて、むしろ絵を描いている途中に「このクオリティでは納得できない」と思えば、納得できる仕上がりになるまで手数をかけて描き直します。その試行錯誤を何度でも繰り返せるようにテンポを良くしていく……そんな感じです。ここでどれだけ妥協せずに進められるかで、満足いく絵に仕上がるかが決まってきますね。
精神的な変化が、プロとしての意識を持たせてくれた

2~3歳くらいから絵は描いていたみたいです。物心ついた頃からずっと絵を描くことが好きだし得意だったので、いずれプロのイラストレーターになりたいと思っていました。
でも、実はうまくいかないことのほうが多くって、実際に自分が何をしたかって振り返ると、イラストレーターとして食べていくための努力はできていなかったんです。
でも、20歳くらいで”自分の未熟さ”に気付かされる出来事があって……一度は絵の道で生きていくことを諦めようかとも考えましたが、やはり「絵を描くことが好きだ」と感じて、そこから仕事として生きていける絵を描くことを目指すようになりました。

高校卒業を間近にして、自分の居場所がどこにあって、自分はこれからいったい何をしたいのかがわからなくなってしまいました。それで、卒業してすぐに、身内のツテでブラジルに滞在することにしたんです。一度外の世界を見てみようと思って、約2年間すごしました。
プロを諦めきれない、すごく悶々としていた時期だったので、日本を離れたことでかえって絵で生きていくことを強く意識できるようになったのかもしれません。そんな頃に、とあるソーシャルゲームのイラスト制作の依頼をいただいたんです。これこそ、自分が目指していた「イラストレーターのお仕事」そのものでした。絵を描き進めるうちにと、これからもこうやって”仕事として絵を描きたい”という想いが強く湧いてきて——これまでにないくらい気持ちを込めて描いてみました。
▲プロとして活躍するMika Pikazoさんの作品

そうですね。「どんなイラストを求められているか」と考えられるようになったことで、仕事としてのクオリティーを出せるようになりました。あとは、ブラジルでの出会いが自分にとって大きな心情の変化をもたらしました。
もともと自分はサブカルチャーとか、アンダーグラウンドとか、王道ではないものが好きだったんです。でも、学生の頃は大きな声で自分が本当に好きなものを言える環境ではなくて……。誤解を恐れずに言うと、日本人って同調性が強いところがありますよね。みんなが好むものを同じように好む傾向がある。自分みたいな人間が好きなものを主張すると、まわりの大人や同級生から批判されたり笑われたりすることもあれば、理解してもらえず「好きでいちゃいけないのかな」と心が揺らいだ経験もあります。そうして過ごすうちに、次第に自分が好きなオリジナリティーを追求しなくなっていったんです。
けど、ブラジルで出会った同世代の人たちはみんな大人びていて、とても寛容でした。国籍も違えば、肌の色も違う。考え方もさまざま。誰を否定するわけでもなく、むしろ違いを受けいれてくれるというか。まったく違う見た目をして違う趣味を持っている人たちが、皆で集まって楽しく話している。そんな出会いを通じて、「みんな違ってみんないい」と思うことができるようになりました。私にしか描けない絵を、私なりに表現してもいいんだなって。
だからあのとき思い切って国外へ出てみたのは、結果的に良かったなって思っています。周囲の人からは、ブラジルに行ったことで「色使いのバリエーションが増えたね」って言われることも多いですが、私にとってはそうじゃなくて、自分が”クリエイト”をすることを素直に肯定できる気持ちになれたことが一番大きな収穫でした。
好きなことを追求すれば、道は開ける

音楽や映像など、自分とは異なる分野で活躍している人たちと関わっていきたいです。先ほどのエピソードにもつながるのですが、「誰かの作品に自分の絵が携わっている」という感覚をもっと味わいたいと思っています。
なにより、辛い時やどうしようもない時に「もうちょっと頑張ってみよう」と背中を押してくれた尊敬するクリエイターさん達への感謝の気持ちも込めて、自分も絵で何かを投げかけることができたらと考えています。

私の「もっと上手くなりたい」という気持ちの根源は、「絵が好き」という気持ちでした。ブラジルに行く前は、自分が好きなものに対して理解を得られなかったこともありましたが、それでも周りのことを気にせず、自分の「好き」を追求できたからこそ今があると思っています。好きなことが自分を救ってくれたんです。
「好き」の対象は必ずしも絵である必要はないと思っています。例えば音楽でも、聴くことに没頭するうちに、その影響が絵に自然と表れてきたりします。
好きなもの、趣味を追求することで、その人にしか描けない世界が生まれてくるんです。
なので、「これがやりたいことだ」と思えるまで、好きなことを突き詰めてみてください。いろんなものに触れたり見てみたりしてください。自分の方向性を決めるのは自分自身なので、その直感を大切にしていけば、おのずと道は開けていくと思っています!
自分の気持ちに正直に向き合ってみよう
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