奥が深すぎる落語の「仕草」って? 思わず描きたくなる落語入門!

文:近藤世菜 写真:前田彩夏
『昭和元禄落語心中』や『じょしらく!』など、落語をテーマにした作品がじわじわと人気を広げています。また、そういった作品をきっかけに落語そのものに興味を持つ人も増えているようです。
実は、pixivが手掛けているつくドル!プロジェクトの公式イラストレーター、白森さわもそのひとり。『昭和元禄落語心中』のアニメをきっかけに、「落語っておもしろそう……!」と、むくむく興味がわいてきたんだとか。
さらに、イラストレーターとして活躍している彼女にとって、随所に出てくる落語特有の動きは、創作意欲を刺激するものなんです。
実は、pixivが手掛けているつくドル!プロジェクトの公式イラストレーター、白森さわもそのひとり。『昭和元禄落語心中』のアニメをきっかけに、「落語っておもしろそう……!」と、むくむく興味がわいてきたんだとか。
さらに、イラストレーターとして活躍している彼女にとって、随所に出てくる落語特有の動きは、創作意欲を刺激するものなんです。

あの動きを臨場感たっぷりのイラストにするにはどうしたらいいんだろう……? 好きな作品のファンアートだし、世界観をとらえて描きたいけど、漫画やアニメだけじゃつかみきれないし……。

自分でもいろいろ調べてみたけど、付け焼き刃な知識だとどうしてもウソっぽくなっちゃう。かといって、寄席を観に行くのはハードルが高いしなあ……。
そんな悩める白森さんのために、今回は落語家で二ツ目の林家けい木さんをお招きして、実際に落語特有の動きを間近で見せていただくことにしました!

記事の前半では、けい木さんの動きをもとに、白森さんが描いたイラストを紹介。扇子一本でさまざまな登場人物を演じ分ける、落語のテクニックをひもといていきます。
後半では、けい木さんが落語への思いやこだわりを語ったインタビューの様子とご好意で急遽開催してくださったピクシブ寄席の様子を動画でお届けします! 最後までお見逃しなく!
後半では、けい木さんが落語への思いやこだわりを語ったインタビューの様子とご好意で急遽開催してくださったピクシブ寄席の様子を動画でお届けします! 最後までお見逃しなく!
白森さわが落語の「仕草」を描いてみた!
さっそく、けい木さんの演技を見ながら白森さんがその場でスケッチをしていきます。
今回紹介していただいたのは、「お辞儀」「そば」「お茶」「たばこ」「お饅頭」の5つの仕草。実演を見た後、さらに写真で確認しながら、細かい部分を書き足したり色を塗ったりして、イラストを仕上げてもらいました。
それではピクシブ寄席のはじまり、はじまり〜!
今回紹介していただいたのは、「お辞儀」「そば」「お茶」「たばこ」「お饅頭」の5つの仕草。実演を見た後、さらに写真で確認しながら、細かい部分を書き足したり色を塗ったりして、イラストを仕上げてもらいました。
それではピクシブ寄席のはじまり、はじまり〜!
お辞儀

落語の高座は必ずお辞儀から始まりお辞儀で終わります。だからこそ「お辞儀だけは丁寧に」と弟子に教える落語家の方も多いそうです。けい木さんのお辞儀も、観ているこちらの背筋もピンと伸びるような丁寧で心のこもったお辞儀でした。


手の置き方がとても美しくて印象的。頭のてっぺんが見える体制のポーズは普段あまり描かないので、全体のバランスが崩れないように意識して描きました。
そば

つづいて、落語の動きといえばこれというそばを食べる姿。
落語の中にはこのように、身振りや表情を使った表現が多くあります。
落語の中にはこのように、身振りや表情を使った表現が多くあります。

こういった身振り手振りのことを僕らは「仕草(しぐさ)」と呼んでいます。

けい木さんが実演してくださった落語の仕草を観ていると、本当にそこに実物が見えてくるような気がするのですが、不思議なことにただリアルな動きをしているというわけではありません。


実際に蕎麦を食べる動きよりもかなりオーバーに動いていらっしゃいました。蕎麦をすするためにめいっぱいすぼめた口、咀嚼音(そしゃくおん)の豪快さ、大き目のお椀をもつ手……。

また、かなり表情が豊かだったので、デフォルメせず描きました。
口をすぼめたとき、思い切りへこむ頬もそのまま写しとりました。普段デフォルメの強いアニメ調のイラストを描いている私としては新鮮で、描いていておもしろかったです。
口をすぼめたとき、思い切りへこむ頬もそのまま写しとりました。普段デフォルメの強いアニメ調のイラストを描いている私としては新鮮で、描いていておもしろかったです。
お茶


飲み物を飲むときって、意外と首に目がいくことに気が付きました。
顔を上げると、胸鎖乳突筋……いわゆる首すじが浮き出てくるので、強調して描きました。
顔を上げると、胸鎖乳突筋……いわゆる首すじが浮き出てくるので、強調して描きました。

たばこ


「たばこの持ち方は役柄によって違う」という話を伺っていたので、手の仕草に注目しながら描きました。落語の仕草の中でも特に、手の動きはとても繊細でしなやかなので、描くのが難しかったです。

また、頬を大きくへこませて吸っていらしたので、そばと同じくデフォルメせずに描きました。

実は、事前のインタビューの際、けい木さんが役柄によるたばこの持ち方の違いについて話してくださっていたんです。


手を返して持って飲むのは花魁(おいらん)、どっしり構えて姿勢正しく飲むと武士、せせこましく飲むと町人になります。
この予習があったからこそ、手の動きに注目しようと思えたのかも。
もちろん、気負いすぎる必要はないのですが、少しでも知識がある方がより鋭い視点で対象を観察できることができるようです。
もちろん、気負いすぎる必要はないのですが、少しでも知識がある方がより鋭い視点で対象を観察できることができるようです。
お饅頭


口を大きく動かすと、顔下半分の表情筋の大半が動きます。そこで、フェイスラインの変化やしわが、通常時と違うことが伝わるように、少し大げさに描くようにしました。

白森さんもイラストレーターならではの視点で気付いたようですが、落語の仕草は決して動きだけでできているものではありません。表情や息遣い、音などさまざまな要素が合わさることで臨場感あふれる演技になっているんです。
