自分が観てみたい、が原動力。架空紙幣作家 oloさんインタビュー<後編>
架空紙幣にも「作家性」が宿る?

▲取材時に見せていただいたoloさんの本棚に並ぶ「世界の貨幣コレクション」。
━━今は会社員をされているそうですが、架空紙幣の制作や研究を「本業」にしていく可能性はありますか?
その可能性があったら面白いですけど(笑)、自分にそのノウハウがないのと、架空紙幣を作っている人があまりいないので、想像がつかないですね……。
架空紙幣をプレゼントやノベルティとして使いたい、という依頼は今でもありますが、果たしてこれがギャラリーに並ぶのか?というと全く……。
実際にやっている人はいるんですけども。
架空紙幣をプレゼントやノベルティとして使いたい、という依頼は今でもありますが、果たしてこれがギャラリーに並ぶのか?というと全く……。
実際にやっている人はいるんですけども。
━━そうなんですか!
太湯雅晴さんという美術家の方が紙幣をモチーフにした作品を発表されています。広告のお仕事もされているようです。あと他に架空紙幣の作者といえば、赤瀬川原平さんですね。赤瀬川さんは、すごく端折って言うと、千円札を印刷して有罪になった芸術家です。
赤瀬川さんは、千円札を製版・印刷したものを使って様々な作品を作った結果、「通貨及証券模造取締法」に抵触しているとして裁判にかけられます。その裁判の最中に、彼は「零(ゼロ)円札」というのを作りました。
お札の写真が本に載るとき「見本」と文字が入りますよね。零円札ではそこに「本物」と入っています(笑)。券面の柄に「造反」って文字があしらわれていたりと、なんだか反発的なものを感じる仕上がりになっているんです。
「"本物の零円札"なら、印刷しても文句ないだろう」という皮肉ですね。
その後も、雑誌に実物大の千円札を載せて「印刷して作れる千円札の模型だ」と言って出版して、実際にそれを作って映画館で使おうとした人が出たことで、編集長が捕まる騒ぎになったりしています。
赤瀬川さんは、千円札を製版・印刷したものを使って様々な作品を作った結果、「通貨及証券模造取締法」に抵触しているとして裁判にかけられます。その裁判の最中に、彼は「零(ゼロ)円札」というのを作りました。
お札の写真が本に載るとき「見本」と文字が入りますよね。零円札ではそこに「本物」と入っています(笑)。券面の柄に「造反」って文字があしらわれていたりと、なんだか反発的なものを感じる仕上がりになっているんです。
「"本物の零円札"なら、印刷しても文句ないだろう」という皮肉ですね。
その後も、雑誌に実物大の千円札を載せて「印刷して作れる千円札の模型だ」と言って出版して、実際にそれを作って映画館で使おうとした人が出たことで、編集長が捕まる騒ぎになったりしています。
━━赤瀬川さん、姿勢が一貫していますね(笑)。太湯さんの作品にも、社会に対するメッセージの主張がセットになっているようです。
そう、でも私は別にそういうことをするつもりが全くなくて。社会に反抗するどころか、わざわざ「合法的な架空紙幣の制作に関する考察」という本を作ったくらいです(笑)。

▲oloさんが自費出版した本「合法的な架空紙幣の制作に関する考察」。
━━面白いことに、oloさんと他のお二人の架空紙幣は、どちらも紙幣を模しているけれど、同じ人が作ったものには見えないですね。
出来上がった結果は一見似ているけど、作りたいものや元となる考えが異なるからかな、と思います。
太湯さんは、本物の紙幣の模様をトレースして作品に使っているようなんですが、私の場合は商用利用可能な素材を使ったりして、権利的に問題のない形で作るという、手法の違いもあるでしょうね。
太湯さんは、本物の紙幣の模様をトレースして作品に使っているようなんですが、私の場合は商用利用可能な素材を使ったりして、権利的に問題のない形で作るという、手法の違いもあるでしょうね。
「壊してもいい」から、偽物が好きになった
━━oloさんの場合は、前編で伺ったように「紙幣のデザインが好き」であったり「お札らしさに対する探究心」が、架空紙幣制作の出発点でしたね。
はい。あと、私は「偽物」も昔から好きだったんです。
なんで偽物が好きなのか、というと、たぶんいちばん初めの動機は、物が壊れたところが見たい。でも本物を壊すと怒られちゃう。偽物なら、壊しても本物が損なわれることはない。燃やしたいとか破りたいとか、そういう気分を味わうために、よく似た偽物を作ってそれを壊せばいいんだ、と。
幼少期にそう考えたような記憶があるんですよね……。
なんで偽物が好きなのか、というと、たぶんいちばん初めの動機は、物が壊れたところが見たい。でも本物を壊すと怒られちゃう。偽物なら、壊しても本物が損なわれることはない。燃やしたいとか破りたいとか、そういう気分を味わうために、よく似た偽物を作ってそれを壊せばいいんだ、と。
幼少期にそう考えたような記憶があるんですよね……。
━━へええ!普通なら「壊したい」だけで動きそうなところ、なんと理性的なお子さんだろう(笑)。
まあ、それが破壊にはしだいに興味がなくなっていって、単に偽物が好きになったんです。昔はFLASHアニメとかも作っていたんですけど、パロディばかりでした。
ほかの方の作品をいじくりたいと思っても、勝手にいじると著作権に触れてしまうし、作者の方も気分を害するかもしれないし……。だから、よく似た偽物を作ってそっちをいじっていたと。
高校生くらいの頃、紙幣の模写をしているうちに「本物に似せすぎると犯罪になってしまう」ということに気づいてからは、本物と共通した要素を持ち、本物を手にしたときと同じような感覚を味わえて、法に触れない安全なものを作るには?ということに興味が出てきて、今はその延長線上にいると思っています。
ほかの方の作品をいじくりたいと思っても、勝手にいじると著作権に触れてしまうし、作者の方も気分を害するかもしれないし……。だから、よく似た偽物を作ってそっちをいじっていたと。
高校生くらいの頃、紙幣の模写をしているうちに「本物に似せすぎると犯罪になってしまう」ということに気づいてからは、本物と共通した要素を持ち、本物を手にしたときと同じような感覚を味わえて、法に触れない安全なものを作るには?ということに興味が出てきて、今はその延長線上にいると思っています。
━━なるほど。「本物をリスペクトしつつ偽物に対して思いっきり悪ふざけをする」という姿勢は、他の作品にも通じていそうですね。