『NieR:Automata』『グランブルーファンタジー』のキャラクターデザインを手掛けるCyDesignationに突撃!#DESKWATCH
イラスト、漫画、アニメ、動画、音楽……さまざまなジャンルで活躍するクリエイターたちの制作机にスポットを当てる連載企画『#DESKWATCH』。珠玉のクリエイティブがどのような環境で生まれるのか、動画とインタビューでじっくり迫ります!
今回は、スクウェア・エニックスから好評発売中の『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』や、Cygamesの『グランブルーファンタジー』『神撃のバハムート』などのキャラクターデザインやクリエイティブを手掛ける会社・CyDesignation(サイデザイネイション)にお邪魔しました。また、そこでキャラクターデザイナーとして働く永井悠也さんに、お仕事についてお伺いしてきました!
絵は下手でもいい!? CyDesignationが求める人材とは
ひとことで言うと、2Dのコンセプトアーティスト集団です。弊社は社長も役員もみんな、もともと絵を描くクリエイターなんです。独立してCygamesさんと一緒にやらせていただくことになって、この会社を立ちあげました。
Cygamesさんのゲームタイトルのコンセプトアートやアートワークはもちろん、ほかの企業様のアートワークもやらせていただいています。
──会社としての代表タイトルは何でしょうか?
有名なところだと『グランブルーファンタジー』『Shadowverse』『神撃のバハムート』などのタイトルをやらせていただいています。
あと、役員のほとんどが、以前スクウェア・エニックスさんに勤めていたこともあって、最近では『NieR:Automata』も担当させていただきました。
──Cygamesやスクウェア・エニックス以外の企業からも、依頼を受けることはありますか?
はい、ありますよ。弊社はCygamesさんの一部署だと誤解されがちなんですが、そういうわけじゃないんです。別の会社ですしね。
他企業様で珍しいところだと2013年に行われた第62回式年遷宮にあわせて、(伊勢神宮の)公式サイトで流れる映像のコンセプトボードを制作しました。代表の皆葉英夫が手掛けています。
──ゲームとは無関係の企業とも、お仕事をされているんですね……!
では永井さん個人について伺います。まず、どのようにしてCyDesignationに所属されたのでしょうか。僕は前の会社を辞めてから、1年くらいフリーのイラストレーターをやっていましたが、正直「イラスト描くの向いてないなぁ」と思ってまして(笑)。「やっぱりキャラクターデザインのほうがいいね」ってずっと言っていたら、当時CyDesignationに勤めていた友人に誘われて面接していただいて入社しました。
うちの場合、絵を描くのは下手でもいいんです。それよりもデザインセンスのほうを重要視します。実際、僕もイラストは下手ですが、デザインセンスを買ってもらえて採用されたのかなと思います。
──永井さんの画力で「イラストは下手」と言われると、CyDesignationさんの基準がとてつもなく高いように思えるのですが……(汗)。
いやいや、そんなことないです。僕なんてしょっちゅう吉田(明彦)さんに「バランス悪い」って言われますしね。大丈夫ですよ、センスさえ感じられれば。
会社員でいることのメリットとデメリット
僕はPainter一辺倒です。ただ、うちの会社でPainterを使っているのは僕だけで、ほかの人はほとんどPhotoshopかSAIですね。
PCでイラストを描き始めた当時、寺田克也さんに憧れていたんです。それで、寺田さんがPainterを使っていらしたので、そのまま真似しました。
ただ、特別なこだわりがあるわけじゃなくて、ほかのソフトの使い方がわからないからPainterを使い続けているだけでして……。ブラシも設定もデフォルトのままなんです。
最近のソフトはいろいろ便利な機能があって、エフェクトなんかも描きやすそうなので、若い子に使い方を教えてほしいなぁと思います。
──デフォルト設定のまま仕上げまで手描きって、そのほうがすごい気が……。
環境といえば、会社で作業する社員クリエイターと、自宅で作業するフリーランスはまったく環境が異なりますよね。永井さんが思う、会社勤めのメリットとデメリットを教えてください。
僕にとっての一番のメリットは、確定申告をしなくていいことです!(笑)
保険や福利厚生もありますしね。それに、技術を教えてくれる人がついてくれることや、周りに上手い人がいっぱいいるのもメリットだと思います。一人で練習するよりもさまざまなことが身につくし、向上心も上がりますから。
デメリットは何だろう…………。あ! 出勤に時間を取られることですね! 毎日「どこでもドアがほしい」って思ってます。デメリットはそれくらいですね。
──なるほど。クリエイターは自由業というイメージがありますが、会社員というポジションにもメリットはたくさんあるんですね。
キャラクターデザインのポイントとは?
──イラスト関連の仕事のなかでも、特にデザインセンスが必要とされる“キャラクターデザイナー”という職業について教えてください。
まず、どういう道筋でキャラクターデザイナーを目指せばいいのでしょうか?
──若いクリエイターは“自分らしさ”がどういうものか、迷うこともあると思います。どうしたら自分の持ち味を見つけられるでしょうか?
無理にオリジナリティとか個性を出そうとしなくていいんです。愛されるキャラクターを作るためには、ある程度ベタな要素をおさえる必要がありますし。そのなかにひとつだけでも自分らしさ……自分の好きなものを混ぜられればいいなと。
あと、他人と自分を比べないほうがいいと思います。あんまり比べすぎると病んじゃいますしね……。他人のことは気にせずに、自分の好きな世界観やデザインを考えていくのが大事だと思います。──キャラクターデザインについて勉強するには、具体的にどんなことをしたらいいでしょうか?
デザインの幅を広げるためには、“いろいろなものを見ること”が大切だと思います。これまでアニメしか見てこなかったなら、実写映画や海外ドラマを見てみるとか。センスを磨くには、ファッションに興味を持つのもいいですね。
とにかく知識は浅くてもいいので、幅広くいろいろなものを見るのが大事です。ひとつのジャンルに偏ってしまうと、デザインの幅が狭まってしまうので。
──デザイン案を出すためのポイントがあれば教えてください。
線画から描くんじゃなくて、まずベタで塗りつぶして、シルエットから決めていくのがいいと思います。塗りつぶした上からラインをひいていくんです。
白いキャンバスに線画から描くと、物体としての重みや形がわかりづらいので、いざ色を塗ってみたらまとまらないことが多々あります。だから最初にシルエットラインを塗りつぶしてから細かく決めていくのがおすすめです。
それに、シルエットだけでも「このキャラだ」とわかるデザインにするのも大切なので、そういう意味でも最初にシルエットを決めるのがいいと思います。
『NieR:Automata』のデザインについて
──最後に、『NieR:Automata』について聞いていきます。永井さんはヨルハ部隊司令官、アダムとイヴ、アネモネなど、複数のキャラクターデザインを担当されていますね。大変だったことや、思い出に残っていることを教えてください。
『NieR:Automata』はすごくスルスル進んでしまって、僕のほうが「本当に大丈夫ですか?」って確認するほど、リテイクが少なかったです。
ただ、唯一パスカルというロボットのキャラクターだけは何度も描き直しましたね。僕はハイテクなメカは好きなんですが、レトロなロボットというのは描いたことがなくて、そのせいか吉田さんのリテイクがすごかったです。20回くらい直したと思います。
──仕様書には、キャラクターの指定は細かくありましたか?
そうでもなかったです。アダムとイヴなんて「ワイシャツに革パン」「ロン毛と短髪」「銀髪」くらいでした。さすがにワイシャツと革パンだけじゃキャラが立たないだろうと思って、鱗みたいなパンツにして強さやヤンチャっぽさを出しました。
タトゥーは「あってもなくてもOK」という感じだったので、タトゥーなし、腕だけ入れる、半身に入れるなど複数の案を出してみたら、それを全部使うことになりまして。ゲームをプレイしてくださった方はわかると思うんですが、イヴのタトゥーってだんだん広がっていくじゃないですか。あれは僕のデザイン案をすべて取り入れてもらったから、ああいう見せ方になったんですね。
──『NieR:Automata』で担当されたキャラクターのこだわりポイントを教えてください。
司令官は、2Bと対比にしたいと思っていたので、胸もお尻も大きいキャラにしました。
アダムとイヴは、女性からカッコイイと言われるビジュアルを目指しました。女の子の気持ちになって「抱かれても良い」と思うくらいの気持ちで(笑)。
アネモネはあえてベース型の顔にしています。登場キャラ全員が完成されたラインだと、似たような絵ばかりになって味気ないと思ったんです。でも、そこまでカメラが近寄れないので、ゲームではわかりづらいかもしれません。
そういう細かなこだわりも掲載されているので、ぜひ『NieR:Automata World Guide ニーア オートマタ 美術記録集 <廃墟都市調査報告書>』や『NieR:Automata Strategy Guide ニーア オートマタ 攻略設定資料集 《第243次降下作戦指令書》』もチェックしてみてください!
夢を掴むための選択肢は、多いほうがいい
キャラクターデザインの仕事が楽しすぎて、朝から晩まで熱中してしまうという永井さん。自分にあった会社で働けてよかった、と嬉しそうに語ってくれました。
個人では掴みにくい仕事ができたり、なかなかできない経験を得られる“社員クリエイター”は、フリーランスとはまた違った魅力があります。将来、クリエイターを目指している方は、ゲームの開発会社や関連会社への就職も選択肢のひとつにしてみても良いかもしれません。
DESKWATCHでは、クリエイターたちの素顔や個性を垣間見ることのできる“デスク”にスポットを当て、彼らがどのように素敵な作品を生み出していくのか取材します。引き続き、次回もお楽しみに!
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