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コラム
2023.09.01

「オタク友達をつくることを諦めきれない」コミュ力以前に必要なものがある/カレー沢薫の創作相談

  • カレー沢薫
  • コラム
  • 創作相談
文/カレー沢 薫

「オタク友達」をつくることを諦めきれない

私の悩みは「オタク友達がいないこと」です。それなりに二次創作の同人活動をしてきましたが、同じジャンルを愛して語り合える友達というものができたことがありません。会社員として働いていますし、最低限のコミュニケーション能力はあると思っていますが、人付き合いが苦手でSNSも苦手のため、オタク友達を作ることは半ば諦めています。それなのに、オタク友達と同人イベントの後に一緒に焼肉をしたり、原稿通話をしたりという夢を捨てることができていません。この前同人イベントにサークル参加したとき、ファンだと声をかけてくださる方がいたのですが、そんなものにならなくていいから友達になって欲しいと思ってしまい自己嫌悪しました。創作や同人活動はとても楽しく大好きです。一人だからこその気楽さも感じているのですが、時々虚しくなることもあります。どうすれば折り合いがつけられるでしょうか。

過去最大の「何故俺に聞いた」であり、連載はじまって以来のクソ回の予感です。


イベント終わりに打ち上げに行く方法を知りたければ、打ち上がっている側に聞くべきでしょう。

しかしあいつらに聞いたところで「何かいつも自然にそうなってる」みたいなことを言いだし、自然にやった結果一人になっている俺たちの心を余計孤独にさせるに決まっています。


アイツらはそういう無神経なところがある、だがそういう奴ほど何故か周りにはいつも人がいる。実は全員に嫌われていてアイツがトイレに立った瞬間、残りのメンツによるアイツの悪口大会で爆上がりすればいいのに。


このように私が打ち上がり勢の幻覚に本気で怒っているのと同じで、あなたも「オタ友」や「イベント後の焼肉」の幻想に夢を見すぎている可能性があります。


「自然にそうなってる」という私の幻覚が言うことにも一理あります。自然と一人になっている人間はコミュ力に問題があるわけではないとはケツが裂けても言えませんが、それ以上に「一人が好き」である場合が多いのです。


そういうタイプが、オタ友グループに入り、隙あらばさぎょいぷ、合同誌にアンソロ、そしてイベントの度に打ち上げというような活動をしたとしても、早々に「楽しい」を「疲れた」が凌駕しはじめ、イベントの度に差し入れを持っての挨拶周りや当然のように開かれるアフターに対し、いつもの「一人になりたい欲」が抑えきれず、やんわりと誘いを断り続けているうちに何となく疎遠になり、自分から距離を置いたくせにXに流れて来る「自分抜きのアフター」にバッチリ傷ついて「こんなに苦しいのならはじめからオタ友などいらぬ!」という限界同人サウザー様になるだけじゃないでしょうか。


あなたも毎回「一人マジ辛くて死ぬかと思った、また参加しよ!」というマゾヒズムで活動を続けているわけではないでしょう。

基本的にあなたは一人でも平気な人であり一人でも同人が楽しめているから継続もできている、つまり「一人でも物事を楽しむ能力がある人」なのです。


一人で無限に時間を消費できる、むしろXだけ62時間やっている俺たちからは想像もつきませんが、世の中にはその力がない人もいるらしく、そういうタイプはたまたま誰もつきあってくれる人がいないとき、耐えがたき孤独に襲われ、元カレにドルチェ&ガッバーナ臭漂うLINEを既読無視されてさらに寂しくなったりするそうです。


あなたはコミュニケーションが苦手というより「一人が得意」な人であり、得意分野でファンができるほどに活躍できている人なのです。

個人競技で結果を出せている人が今更サッカー部に入部して下手をこく必要はないでしょう。

隣の芝は大麻に見えているだけとわかっていても

しかし「彼女ほしいなあ」というボヤきに対し「そんなんいても面倒くさいだけっしょ、荒野行動やる時間なくなるべ?」と同レベルの陰キャに言われて納得できる奴がどれほどいるのかという話です。


あなたも言われなくたって「ここが自分のベスポジ」という自覚があるでしょう。しかしどれだけ現状に満足していても「自分にないものがうらやましく見える」というのはもはや人間の本能です。


「隣の芝生は大麻に見えてるだけ」と頭では理解し大麻側の人間に「そんなに良いもんじゃないしこっちはこっちで大変だよ、捕まるからね。LOVE&PEACE!!!」と言われても、やっぱり楽しそうに見えますし、何せそっちの草を吸ったことのですから「楽しいんじゃないか」という憧れは一生消えず「もしかして誰よりもキマれるのでは」という自分への期待も捨てきれないと思います。


あなたも、作業通話や打ち上げに参加してみたら一人でやるより全然楽しかったし、そっちの方が向いている可能性がゼロではありません。


幻想が捨てきれず、楽しめていたソロ活にすらケチがついているというなら、一度幻想に体当たりしてみるしかないでしょう。

それで壁に激突したとしても、「やっぱりワイの居場所はここやったんや」と「納得」して鼻血首コルセット姿で椅子が一つしかないスペースに笑顔で戻れるなら、やる価値はあります。

体当たりするなら覚悟しておくこと

実はいうと私も「ネットで知り合ったオタ友とイベント参加&食事会」経験者です。経験した上で「やっぱり自分は一人でいた方がいい」と判断し、次ハマったジャンルでは同ジャンルのオタ友を全く作らず、DB(ドスケベブック)を買いに行くために「担当編集」を売り子に置くという、寂しさ以上にプライドをなくした活動をしています。そういう判断ができたのも一度でも集団活動を経験していたおかげかもしれません。


では、私がかつて何故オタ友を作り飲み会ができたのか、今思い返してみると、良くも悪くも「物怖じがなさすぎた」からと言えます。


中二が何故黒歴史を作りがちかというと、「自分のセンスがダサいわけがない」という謎の自信があるからであり、故に自身がコーディネートしたマントスタイルで人前に堂々参上できてしまうのです。

20代前半の私にはそういう無根拠な自信がまだ残っていたうえに、「ネット」で気がさらに大きくなっていたため「俺に感想を言われてキモいと思う奴がいるはずがない」と思っており、同ジャンルでちょっと良いなと思える創作者の掲示板にかたっぱしから書き込みをして、その中で構ってくれた人に対し瞬時にゼロ距離となり、イベント参加や合同誌制作、飲み会参加を呼びかけました。


その間わずか4か月程度であり、イベントも飲み会も開催され、特に大きな問題はなかったのですが、2回目があったのかというと「なかった」としか言いようがありません。


今でも「あの時の人たちから自分はどう見えていたのだろう」と考えてキツい気持ちになることがあります。


このようにあなたはこのまま行くと「オタ友を作らなかった後悔」を背負うことになりますが、トライした結果「オタ友に対しやらかした後悔」という、より具体的、そして他人の記憶にも残る後悔を作るリスクがあることを理解して動きましょう。

孤独や虚しさとはホコリと同じ

とはいえ、こんなコミュ症の体験談など参考にならないでしょう。

けれど継続的なオフ会をやっている人たちにどうしたらそういう会の一員になれるのか聞いても、大体は「SNSなどで長期的に交流した後。イベントをきっかけに、じゃあみんなで集まろうかという話になる」という普通の返答が返ってきます。


やはり「焼肉は1日にしてならず」であり、定期打ち上がり勢はコミュ力以前に「人付き合いがマメ」なのです。

あなたも「一人が気楽」ということは「人付き合いが面倒」と思っている可能性が高いです。「まずはSNS上などで長くマメなやりとり」の時点で「面倒くさい」と感じるようなら「突如現れた距離感バグり太郎」として鮮烈デビューしてしまう素質があるので、今まで一人でいたのは間違いどころか「英断」と言っていいでしょう。


それに首尾よく友達やグループを作れたとしても「自分だけこの集まりにノリ切れてない気がする」という新たな孤独を見つけてしまうかもしれません。


孤独や虚しさとは、ホコリと同じで一人だろうが集団だろうが、人の心に必ず発生するものであり、ホコリ撲滅などという不可能なことを考えるより、いかにホコリに気を取られず、ホコリがない部分に目を向けるかの方が大事だったりもします。


あなたは今ホコリに気を取られすぎて、わざわざスペースにまできてくれた「純粋な作品のファン」という上質大麻すらでけえホコリに見えているという有様です。

中には、友達よりそっちを吸いてえよと思っている人もいるでしょう。


隣の芝生が大麻に見えるのは仕方がありません、しかしそっちにばかり気をとられ、自分の足元に生えている上物を踏んでいることに気づかない方が損だと思います。

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カレー沢 薫
  • カレー沢 薫
  • 1982年生まれ。無職。著作は『クレムリン』(講談社)、『負ける技術』(講談社)、『ブスの本懐』(太田出版)など多数。
    趣味はエゴサーチ。

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