画業20周年記念個展「すしだらけ」開催中! 見どころをご本人に聞いてきた!
インタビュー・佐藤ポン
撮影、編集・関口敬文
ただ今、中野ブロードウェイ2階の「pixiv Zingaro」で、『キルラキル』や『天元突破グレンラガン』など、数々の人気作品を手がけてきた人気アニメーター・すしおさんの個展「すしだらけ」が開催されています!
すしおさんの画業20周年を記念したこの個展には、これまでに手がけてきた100点以上の作品を一挙展示! 壁一面に展示される膨大な量のイラストは必見です。そのほかにも、描き下ろしイラストを使った特製「すしおうまい棒」がもらえたり、先着順でサイン会の参加券がもらえるスタンプラリーが開催されるといった、おもしろ企画イベントも盛りだくさんになっています。
今回は個展の開催に先駆け、すしおさんに個展の見どころやアニメーターのお仕事についてお話をうかがってきました。アニメやイラストが好きな方、将来アニメーターを目指す方は必読ください!
すしおさん20周年を祝う個展「すしだらけ」
──個展「すしだらけ」が開催されますが、どういった経緯で企画されたのでしょうか?
すしおさん(以下、す):それが全然わからないんですよ(笑)。
──では誰が言い出したんでしょうか?(笑)
トリガー・企画宣伝デザイナー・立川さん(以下、立):トリガーが設立5周年という話のなかで、「そういえば、すしおさんも20周年ですね?」みたいな話になったんです。それで、なにかやろうかって感じで企画がスタートしました。
す:そんな感じだったっけ?
──初めてすしおさんがその話を聞いたときの感想は?
す:「え? ホントにやんの?」ですね。
一同:(笑)
立:あれよあれよといううちに、開催することになってましたね(笑)。
──お話を聞きづらくなってしまいましたね(笑)。では、いざ開催することになって、どう思いましたか?
す:「無」ですね。
──いやいや、ここはやっぱり「楽しみです」とお答えいただきたく……。
す:はい、楽しみです。
一同:(爆笑)
──冗談はさておいて、イラストが100点以上展示されますが、とくに印象に残っているものはありますか?
す:一番大きく展示される「BUMP OF CHICKEN」20周年記念Tシャツイラストが、ここ最近で担当した仕事のなかで印象に残っていますね。
す:BUMP OF CHICKENの何十万というファンが、自分の描いたTHE LIVING DEAD Tシャツを着ているんです。昔はオレの絵なんて誰も知らなかったのに、みんなTシャツを着てニコニコスマイルなんです。もちろん、みんなはBUMP OF CHICKENのTシャツだからニコニコスマイルなんですけど、すごく感動しました。
──いやいや。絵が気に入らなかったら誰も買わないと思います(笑)。実際にライブ会場で、大勢がすしおさんのイラストのTシャツを着ているのをご覧になって、いかがでしたか?
す:数万人の人が着てくれているのを目の当たりにすると、スーパーうれしくて胸がザワザワしました。
──たしかに目の前にいる大勢が着ていたら、圧巻でしょうね!
す:そうでしたね。会場にいる女の子を片っ端からつかまえて、「それオレが描きましたー!」って声をかけてまわろうかと思いました(笑)。
一同:(笑)
──100点以上のイラストが展示される「すしだらけ」は、どのような方に見に来ていただきたいですか?
す:絵が好きな人に見に来てほしいですね。いろんな情報量、ジャンルの絵がありますので、デッサンがしっかりしている絵だけがいい絵じゃなくて、あえてデッサン崩してデフォルメしてある絵もいいな♥とか、人間の目や脳で判断できる情報量で構成すると見やすいんだなとかそのあたりが伝わるといいなって思います。そして会場から出る頃には、すしお最高of最高って思ってもらえればうれしさの極みであります。
一同:(爆笑)
──11月5日に、すしおさん40歳の誕生日を会場で祝うイベント「すしお誕」が開催されます。このイベントには「1000円以内のプレゼント」を持って行けるそうですが、なにか欲しいものはありますか?
す:なんでもいいです。なにか買わなくてもお手紙とかでもいいし、「イラスト」でもいい。むしろ、イラストはうれしいです。
──すしおさんにイラストを渡すのはハードルが高くないですか?
す:絵は上手いとか下手じゃないですから。どんだけ気持ちが入っているかなんで。むしろ、上手いイラストをもらったほうが、「もっとこう描いたらいいのに……」と気になっちゃいます。
──すしおさんが過去にご覧になって、影響を受けた作品は?
す:展示物を見てくだされば、スグにわかると思います。ぜひ会場に足を運んでいただいて、感じてください。どの絵にも、その要素が含まれていますから。
──展示イラストはお仕事の絵だけではなく、プライベートで描いた絵もありますか?
す:プライベートで描いた絵や落書きのほうが多いです。なので展示の許可を取るのが大変でした(笑)。その節は立川さんスーパーありがとうっ!! ほんとに落描きが多いので、来てくださった人にどう思われるかが心配です。
──なぜ心配なのですか?
す:だって「アニメーター20周年」って言っておきながら、アニメの展示物がほとんどないんですよ。「『キルラキル』の修正原画はどこにあるのかな?」って楽しみにして来たら、あらっ? ってなっちゃうんじゃないかって……。
一同:(笑)
──展示できなかったのでしょうか?
す:やはりスペースの問題が大きいですね。量が膨大すぎて見応えがあるものを選んでいったら、一枚絵のイラストが中心になってしまいました。なので一部の絵を入れ替える二部制にしました。
──でもそれだけ選び抜かれたすしおさんの作品がズラッと見られるのは貴重だと思います。
す:まさに「すしだらけ」というタイトルにピッタリになったかなと思います。
すしおさんの仕事への取り組みが変わった作品──『グレンラガン』
──ご自身がいままでに関わった作品のなかで、その後の仕事に対する姿勢が変わった作品はありますか?
す:『天元突破グレンラガン』ですね。それまでオレは、自己満足のためにしか原画を描いていませんでした。ですが『グレンラガン』のイベントでファンの方々と接する機会があってそのとき「ファンの人たちはちゃんとキャラクターを見ているんだな」ということに気づきました。それからは自己満足の原画じゃいけない、ちゃんとキャラクターが生身で動いているように、そして芝居が伝わるように描かなきゃダメだなと考え直したんです。
──その後はどのような原画を心がけましたか?
す:「いかに見やすく描くか」を心がけました。それ以前はアクションシーンは動きが早くて見づらくても、かっこよければどんな芝居かは伝わらなくてもいいと思っていたんです。
──切り替えは大変でしたか?
す:いや、むしろラクになったんです。自己満足のときは、いかに大変な原画を描いて世間に注目されるかばっかり考えていたんです。原画のなかには自分の欲望しか詰まっていませんでした。でも考え方を変えたら、キャラクターの動きを伝えることに専念できて無駄な動きを描く必要がなくなり楽になりました。よく漫画家が「キャラクターが勝手に動く」と言いますが、まさにそんな感じです。原画はキャラクターの人生を描いてるんです。ファンのみなさんは「キャラクターの動き」を見たいんです。誰も「オレが考えた自己満の動き」を見たいワケじゃありません。
──自己満足の原画をやめて、いいことはありましたか?
す:やはり「動き」が、見ている皆さんに伝わっているなーってのが実感できるようになりました。
うまく描けなければ自分で動いて録画する!?
──キャラクターの動きを描くとき、どのようにすれば、うまく描けますか? レッスン方法はありますか?
す:うまく描けない場合は、実際に自分でそのポーズや動きをやってみるといいと思います。慣れたらある程度は脳内でできるようになりますが、動きによっては今でもやってみないとわからない時が多々あります。てか、そっちの方が多いや。
──関節の限界とかでしょうか?
す:そういうのと、あとは重心の移動とか。例えば剣を振るアクションの場合、最初は脚にある重心がどんどん移動して、最終的には手に持った剣に移りながら斬り下ろす、みたいなことですね。
──イラストの場合は写真を撮影すればよいですが、アニメーションではどうしたらよいですか?
す:写真も撮りますし、動画も録ります。絵を描く手を止めて、同じ動きをスタジオにいる人にやってもらって動画で撮影して確認します。
──手間がかかりますね!
す:そうですけど、そうやって分析して答えを見つけていくのがアニメーターの楽しいところですよ。
──アニメだと、実際には人ができないアクションもよくあると思います。たとえば何十メートルもジャンプしたりとか。
す:そういうときは、自分が跳んでみた動きの感覚にデフォルメを加える感じですね。
──すしおさんが絵を描くとき、もっとも気をつけているのはどこでしょうか?
す:「リアルにとらわれない」ことです。リアルな動きでも、デフォルメした動きでそれっぽく見えれば、いいかなって思ってます。これは自分が関わるアニメ限定の考え方ですけど。全部リアルに描けばいい動きになりますが、情報量ありすぎてなんか見にくいんですよね。なので動きの情報量をコントロールして「ぽい」動きにすることを気をつけてます。
──情報量を減らすとき、どの部分を削るかは難しそうですね。
す:それがセンスです。フフフ。
──最近のアニメはCGを使ったりリアルを追求しているような印象を受けます。
す:好みの問題かもだけど、なんでもかんでも質感テクスチャーを貼るのはやめない? とは思います。
──最後に「すしだらけ」で販売されるグッズで注目してほしいモノはありますか?
す:自分がホンダの「モンキー」というバイクにまたがっているポスターがあるのですが、それが気に入ってます。
──バイクはお好きなのですか?
す:描くのは好きです。この絵のバイクは昔乗っていたやつなんですが……買って1年くらいで盗まれたんです。あのモンキーは30周年記念で販売された、レアなバイクだったんです。なので、あのポスターは「30周年記念の盗まれたレアなモンキーにまたがってる、20周年のオレ」という、泣けるメッセージが込められたイラストです。
一同:(爆笑)
いかがでしたでしょうか。すしおさんのアニメーターとしての熱意がヒシヒシと伝わりましたよね? ご本人のイラストに裏話があるとは意外でしたが、涙無しでは見られない「泣けるメッセージイラスト」をひと目見るためにも、ぜひ「すしだらけ」を体験しにきてくださいね!
■すしお20周年記念個展「すしだらけ」開催概要
日程:2016年11月3日(木)~11月15日(火)
※水曜定休日
会場:pixiv Zingaro
入場:無料
運営:Kaikai Kiki
■pixiv Zingaro
東京都中野区中野5-52-15中野ブロードウェイ 2F
12:00-19:00
※イベントによって異なります(水曜定休)
JR中野駅北口よりサンモール商店街を経由して徒歩3分
03-5345-7313
>>pixiv Zingaro
>>すしお20周年記念個展「すしだらけ」特設ページ