好きな人がいるから、心に響く作品が作れる。「素直になるスタンプ」作者・いつきゆうさんインタビュー
文:近藤世菜
「会いたい」「いつもありがとう」「大好き」……。好きな人に対してだからこそ、なかなか言えない言葉。それを代わりに伝えてくれる存在として、人気となっているのが「素直になるスタンプ」というLINEスタンプシリーズです。かわいくてほっこりした雰囲気の男の子と女の子が、恋をしているときの素直な気持ちを代弁してくれます。
そんな「素直になるスタンプ」シリーズの作者は、イラストレーターのいつきゆうさん。実は、このスタンプを制作したのはご自身の恋愛がきっかけだったとか。そこでいつきさんに、恋愛が創作活動に与える影響と、上手な両立の方法についてお話を伺ってきました。
そんな「素直になるスタンプ」シリーズの作者は、イラストレーターのいつきゆうさん。実は、このスタンプを制作したのはご自身の恋愛がきっかけだったとか。そこでいつきさんに、恋愛が創作活動に与える影響と、上手な両立の方法についてお話を伺ってきました。
好きな人へのあたたかい気持ちが創作意欲につながる
▲ いつきゆう「素直になるスタンプ」
── 「素直になるスタンプ」は、どういうきっかけで制作されたんですか?
大切な人とお付き合いして2年記念のとき、サプライズで贈ろう!と思ったのがきっかけです。でも、審査に半年も時間がかかってしまって……。結局なんでもない日にプレゼントしました。実は今年、1年越しのリベンジで「素直になるスタンプ 〜大好きな君へ 〜」を作ったのですが、今回は間に合ってサプライズ成功でした!
── ということは、ご自身たちがモデルということですか?
いえ、誰かをモデルにして作ったわけではないんです。女の子は髪の毛が短い方が描きやすかったとか、黒髪の男の子が描きたかったとか、そんな理由で。ただ、最近自分たちに似てると言われることが増えてきて、もしかしたら無意識にモデルにしてたのかも……?と思っています。でも、名前も年齢もとくに決めていないので、自由に想像してもらって構いません!
── 自分と自分の恋人になぞらえて想像してみてもいいかもしれませんね。スタンプは記念日のプレゼントのつもりで制作されたとのことですが、いつきさんは以前から好きな人に自分で作ったものを贈る習慣があったんですか?
そうですね、自分にしかできないことをしたくて……。好きな人のことはとびきりのサプライズで驚かせたいんです。作っているときは自分もわくわくしますし。1年の思い出をまとめて絵本を作ったり、バレンタインのときマグカップを作ってそのなかにクッキーをつめて贈ったり……。
▲ いつきさんが制作した実際の絵本。ふたりの思い出が優しい言葉とイラストでつづられています。
たぶん、母が昔から手作りのものをよくプレゼントしてくれていたので、その影響だと思います。
── 「素直になるスタンプ」をはじめ、いつきさんの作品を見ていると「ああ、いい恋をされてるんだなあ」って感じます。
実は私、いま好きな人が初めてお付き合いしている人なんです。付き合うとこんな気持ちになるんだって知ったり、自分の新しい一面を見つけたり……。なんだかくすぐったくて、でもうれしくて。気付いたら、恋愛をテーマにした作品が増えていました。
── 恋愛がご自身の創作にいい影響を与えてるんですね。
今までは恋愛をテーマに創作したことがあまりなかったんですよ。だから新鮮な気持ちですね。それから、自分の気持ちをイラストにすることが多くなったので、これまで以上に普段の生活の中のいろいろなことを大切に思うようになりました。
── たしかにいつきさんのイラストからは日常のあたたかさのようなものが伝わってくる気がします。いつきさんのように自分の恋愛を創作に活かすことって、他のクリエイターでもできると思いますか?
私は活かせると思ってます。というより、私がそういう作品をたくさん見てみたい、と言った方が正しいかもしれません。私と同じように、自身の恋愛経験を活かした作品にはとても共感するので。それから、実際に体験したことは、創作に対してリアルに反映できると思います。
── 逆に、恋愛と創作の両立が難しいな、と感じたことはありますか?
ちょうど付き合い始めたとき、私は美術系の専門学校の学生だったんですが、デザインやイラストの課題が多くて。好きな人と付き合えて、しかも初めての彼氏で、すごく浮かれていたんですが、オンオフけじめをつけなければ……!と奮闘していました。でもやっぱり恋愛も創作も楽しくて、時間を忘れてしまうというか……。それで睡眠時間が短くなってしまって、体調を崩すことが多かったです。
── かなり忙しかったんでしょうね。好きな人とケンカになることはなかったんですか?
創作がうまくいかなると、泣いたり、相手に当たってしまったり……。不機嫌な態度をとって、怒らせてしまうことが多かったです。実は、彼も人と付き合うことが初めてで、お互い適度な距離の取り方に悩んでいたんだと思います。ケンカのあとはなかなか素直になれないので、少し時間を置いてから電話やLINEで仲直りすることが多いです。
── いつきさんにとって、好きな人の存在はどんなものですか?
好きな人は、自分よりも自分のことを知っていて、大切にしてくれる人です。最近は、好きな人にスタンプ制作を手伝ってもらったり、一緒にイベントに参加したりすることもあって、公私ともにパートナーになってくれています。ケンカもしょっちゅうしますが、ここまで本音をぶつけ合える存在ができたのは初めてで。それから、おいしいものや美しい音楽、キレイな景色……と、いろいろなことを一緒に楽しんで、よろこびを共有できることが本当にうれしいです。
実体験をもとにしているから、多くの人に共感してもらえる
▲ いつきゆう『きみと一緒の、なんでもない日。幸せな日。』(宝島社、2016年)
── いまは、恋愛をテーマにした作品が多いいつきさんですが、以前はどんなイラストを描いていたんですか?
物心ついたときから絵を描くことが大好きで。はじめは、ピカチュウばかり描いていましたね。人を描くようになったのは中学で美術部に入ってからです。いまは動物を描くのが苦手で……。最近練習するようになりました。
── いつきさんが影響を受けたり共感したりする作品について教えてください。
尊敬しているのは深町なかさんです! あの世界観にとても憧れていて……。自分も誰かを幸せな気持ちにできる絵が描きたいと、ずっと目標にしています。
── pixivやTwitterで、イラスト以外に漫画も投稿されてますよね。ストーリーやネタはどうやって考えているんですか?
自分の思ったことや感じたことをそのまま漫画にすることが多いです。私の場合「さあ、考えるぞ!」と思うと、肩に力が入りすぎてしまうというか……。どれもつまらないような気がしてしまって。最近は、男の子側の気持ちも知りたくて、彼にいろいろ聞くこともあります。実はそれをそのまま漫画にしている作品もあるんですよ。
── 実体験をもとに描かれているものが多いんですね。
そのせいもあってか、「共感できた」というコメントをいただくことが多くてとてもうれしいです。それから「恋人とふたりでイラストをみるのが日課になっています」とか、「自分たちを重ねあわせて見ています」とか、一つひとつのコメントが励みになっています。
── 周囲の反応でとくに印象に残っている言葉はありますか?
「好きな人と話すきっかけになった」と言ってもらったことですかね。それから、「素直になるスタンプ」シリーズを、家族や友だちが日常的に使ってくれているのはうれしいですね。私が制作したスタンプだと知らない彼の友だちが使ってくれていると聞いたときは驚きました。イベントに参加して気付いたのですが、私の作品を好きだと言ってくださる方って、意外と男性が多いんです。
── え、そうなんですか? かわいらしい雰囲気の作風ですし、てっきり女性のファンの方が多いのかと……!
イベントで実際にお会いするまでわからなかったので、私も驚きました。カップルで来てくださる方も多かったです。それからは、男性でも持ちやすいデザインのグッズを考えたり、ふたりで一緒に使えるようなアイテムを作ったりするようになりました。
▲ ふたりで使えるペアストラップ
── 9月8日(木)から個展が開催されていますが、こだわりや見どころを教えてください。
今まで描いてきたイラストだけでなく、グッズや過去の作品、pixivやTwitterでは公開していない漫画やスタンプのラフなどを展示しています。なんだか自宅を公開している気分です(笑) イラストのふたりのように、ゆるっとまったりした気持ちで見ていただけたらうれしいです。
── 最後に今後描いてみたいもの、やってみたいことを教えてください!
これまではショートストーリーを描くことが多かったので、長編にも挑戦してみたいです。アニメーションスタンプを制作したのをきっかけに、動画制作にも興味が出てきました。それから、好きな人と一緒に始めた作品作りにもっと力を入れたいなと思っています。
▲ いつきさんが好きな人と一緒に作っている作品のひとつ。写真とイラストをコラボレーションさせている。
まだまだ勉強中ですが、どんどん創作の幅を広げていきたいです!
── ありがとうございました!
自分の気持ちを大切にするから、人の心に響く作品になる
いつきさんの「素直になるスタンプ」は、男女問わず多くの恋する人たちに支持されています。それはきっと、いつきさん自身が、自分の恋する気持ちを大切に作品を作っているから。
恋愛も創作も、楽しくて熱中してしまうからこそ、両立するのが難しいと感じることもあるかもしれません。でも、いつきさんのように前向きに恋愛を楽しんで、経験を創作に活かすことができれば多くの人の心に響く作品が作ることができるのではないでしょうか。
恋愛も創作も、楽しくて熱中してしまうからこそ、両立するのが難しいと感じることもあるかもしれません。でも、いつきさんのように前向きに恋愛を楽しんで、経験を創作に活かすことができれば多くの人の心に響く作品が作ることができるのではないでしょうか。
いつきゆうさんの作品の魅力がつまった個展が開催中!
2016年9月8日(木)〜20日(火)、中野のギャラリーpixiv Zingaroでいつきゆうさんの個展が開催中。9月17日(土)13:00~18:00には、サイン会の実施も予定しています。
いつきゆう個展「大好きな君へ」
日時:2016年9月8日(木)〜9月20日(火)※ 水曜定休
会場:pixiv Zingaro(東京都中野区中野5−52−15中野ブロードウェイ 2F)
料金:無料
展示会詳細はこちら
サイン会
日時:2016年9月17日(土)13:00~18:00 ※ 整理券によってご案内の時間が異なります
会場:pixiv Zingaro
参加方法:いつきゆう個展「大好きな君へ」 会場物販にて、税込2,000円以上お買い上げいただいた方に先着で整理券を配布します。
いつきゆう個展「大好きな君へ」
日時:2016年9月8日(木)〜9月20日(火)※ 水曜定休
会場:pixiv Zingaro(東京都中野区中野5−52−15中野ブロードウェイ 2F)
料金:無料
展示会詳細はこちら
サイン会
日時:2016年9月17日(土)13:00~18:00 ※ 整理券によってご案内の時間が異なります
会場:pixiv Zingaro
参加方法:いつきゆう個展「大好きな君へ」 会場物販にて、税込2,000円以上お買い上げいただいた方に先着で整理券を配布します。