機能美と猫愛にあふれてる! 美少女を描く村上ゆいちさんの制作空間 #DESKWATCH
インタビュー:伊藤桃香(ヴィ) 撮影:関口敬文(ヴィ)
イラスト、漫画、アニメ、動画、音楽......さまざまなジャンルで活躍するクリエイターたちのデスクにスポットを当てる連載企画『#DESKWATCH』。珠玉のクリエイティブがどのような環境で生まれるのか、プロのクリエイターはどんなツールを使っているのか、写真とインタビューでじっくり迫ります。
第4弾では、イラスト・漫画・キャラクターデザインなど幅広く活躍する、村上ゆいちさんのデスクに密着。愛らしいパートナー(=猫)のためにカスタマイズされた制作環境に注目です!
第4弾では、イラスト・漫画・キャラクターデザインなど幅広く活躍する、村上ゆいちさんのデスクに密着。愛らしいパートナー(=猫)のためにカスタマイズされた制作環境に注目です!
美少女を描く横では殺人事件!? 作業中のおともはサスペンスドラマ
村上さんのお部屋は、全体的に機能的かつ落ち着いた雰囲気で、洗練された印象です。けれどただシンプルというわけではなく、いたるところに創意工夫の跡が見られます。それは作業のためだけではなく、村上さんの同居人......もとい同居猫・天之助さんへの配慮でもあるようです。
見慣れぬ取材カメラに激しく警戒する天之助さんを気にかけつつ、インタビュースタート!
見慣れぬ取材カメラに激しく警戒する天之助さんを気にかけつつ、インタビュースタート!
──早速ですが、現在使っている制作環境について教えてください。
PCは24型液晶一体型のPCを使っています。CPUはIntel Core i7 2.50GHz、メモリは16GB。HDDは内蔵が1TBで、バックアップや作業用に外付け2TBのものを接続しています。液晶タブレットはCintiq 27 QHDです。
ペイントツールは CLIP STUDIO PAINT(以下クリスタ)・Photoshop・SAI で、ラフがクリスタ、線画がPhotoshop、塗りがクリスタとたまにSAIですね。
ペイントツールは CLIP STUDIO PAINT(以下クリスタ)・Photoshop・SAI で、ラフがクリスタ、線画がPhotoshop、塗りがクリスタとたまにSAIですね。
──線画をPhotoshopで描かれるのは珍しいですよね?
いろいろなソフトを試した結果、最終的に Photoshop に行き着きました。Photoshopだと、鉛筆のようなアナログっぽい線が出せるんですよね。線画は、いかにもデジタルって感じより、アナログ感が残っていた方がいいので。
──作業していて便利だと思うツールはありますか?
クリスタの塗りつぶしツールは便利ですね。それから色校正(※)。
RGBで描いているときに、CMYKの色も同時に表示できるので、納品前の色変換後に「おおおおぅい!」ってなることがないです。とても助かっています。
※色校正…CLIP STUDIO PAINT PRO/EXに搭載されている「カラープロファイル」機能。カラー変換する前にあらかじめ色味の変化を確認して補正できる。
RGBで描いているときに、CMYKの色も同時に表示できるので、納品前の色変換後に「おおおおぅい!」ってなることがないです。とても助かっています。
※色校正…CLIP STUDIO PAINT PRO/EXに搭載されている「カラープロファイル」機能。カラー変換する前にあらかじめ色味の変化を確認して補正できる。
──ツール以外で、作業中のマストアイテムはありますか?
水ですね! 私、すっごくたくさん水を飲むんです。
デスクのすぐ横にウォーターサーバーを置いてるくらい。コップについでがぶがぶ……1日1リットル以上は飲みます!
──これはお湯も出るサーバーですよね。お湯のほうは何に使うんですか?
コーヒーを飲みます。おすすめの豆はマイルドカルディ!
ドリッパーを水筒の上に置いて淹れておくと、1日中熱々のコーヒーが飲めていいんですよ。
──飲み物以外ではなにかありますか?
iPodもマストアイテムですね。J:COM のスマートテレビというサービスを使うと、iPod にテレビの映像を転送することができるんです。それを作業中に流しています。
それから、作業中はもっぱらSkypeですね。
友達としゃべりながら作業する、いわゆる “さぎょいぷ”をやっています。
それから、作業中はもっぱらSkypeですね。
友達としゃべりながら作業する、いわゆる “さぎょいぷ”をやっています。
──作業中に映像をつけたり、Skypeで話したりしていて、集中が途切れることはないんですか?
私の場合、基本的に手と目以外は暇なんです。空いている頭や耳、口などを使っているので、邪魔になることはないですね。もちろんネームや下書きなど、頭を使う作業のときは別ですが(笑)。
絵は頭で考えるよりも、直感的に「これええ感じやん?」という感覚重視で進めていくので、 会話したり、映像を見たりするときと使っている器官が違うというか……。
ただ、やっぱり文章が絡むとダメです。ゲラや指示書を読むときなどは、Skypeでも「ちょっと今しゃべらんといて!」ってなります(笑)
絵は頭で考えるよりも、直感的に「これええ感じやん?」という感覚重視で進めていくので、 会話したり、映像を見たりするときと使っている器官が違うというか……。
ただ、やっぱり文章が絡むとダメです。ゲラや指示書を読むときなどは、Skypeでも「ちょっと今しゃべらんといて!」ってなります(笑)
──な、なるほど......。映像は、どんな作品を見ていますか?
今は「dアニメストア」「Hulu」「Netflix」の3本柱です。以前はレンタル店で借りていたんですが、 返却が面倒なのと、1本終わったらディスクを入れ替えなきゃいけないのがネックで。 配信サイトはオートで次の話に進んでくれるから、楽でいいです。
アニメも見ますが、意外と海外ドラマが捗ります。ミステリーとかサスペンスが好きなんですよ。美少女を描いているときに、画面では殺人事件が起きてる……なんて、別世界すぎますよね(笑)
アニメも見ますが、意外と海外ドラマが捗ります。ミステリーとかサスペンスが好きなんですよ。美少女を描いているときに、画面では殺人事件が起きてる……なんて、別世界すぎますよね(笑)
100ゴールドショップ『ウサギ屋』2
著:猫之宮折紙 イラスト:村上ゆいち ファミ通文庫/株式会社KADOKAWA刊
著:猫之宮折紙 イラスト:村上ゆいち ファミ通文庫/株式会社KADOKAWA刊
迷ったらとりあえず試すのが筆の速さの秘訣
──デスクの上にあるのは左手デバイス(※)ですか?
▲ 村上さん愛用の左手キーボード。塗装の剥げ方から、いかに使い込んでいるかがわかります
そうです、ゲーマーさん御用達の左手デバイス『Razer Nostromo ゲーミング キーパッド』です。すべてのキーにショートカットを登録しています。
※左手デバイス…左手用の多機能入力デバイス。ペイントツール等の使用中、ショートカットキーで多数の機能を切り替えることで効率よく作業を行える。
──作業中はフル活用しているんですね。
そうですね。よくSkype相手にうるさいって言われます。私、左手デバイスもペンもダダダダダって音立てるので……。「え? 工事してる?」って(笑)
▲ 村上さんがイラストを描いてる様子を映像に収めました。左手デバイスの入力の速さに驚くはずです。工事と勘違いするような音もばっちり収録しています
──よく使っているボタンは、表面の塗装が剥げてしまっていますね......!
そうなんです。真ん中の段は消しゴム、下の段は画面回転とブラシのサイズ変更ですね。
使いまくるので剥げてしまいました。悲しい……。
実はこのデバイスは2代目なんですよ。これまでさまざまなタイプを4台使ってきたんですが、いろいろ試して、結局これに戻りました。使い勝手が最高なんです!
でも廃盤になってしまって……。以前は9,800円くらいだったのに、今はプレミア価格がついています。
使いまくるので剥げてしまいました。悲しい……。
実はこのデバイスは2代目なんですよ。これまでさまざまなタイプを4台使ってきたんですが、いろいろ試して、結局これに戻りました。使い勝手が最高なんです!
でも廃盤になってしまって……。以前は9,800円くらいだったのに、今はプレミア価格がついています。
──安いうちに買い占めておけばよかったですね。
これを買った当時は、ちゃんと絵を描いていたわけではなく、ただのガジェットオタクだったので……。「青く光る! カッコいい!」っていうだけで買ったんです(笑)
もう5、6年くらいは使っているので、壊れたらどうしようってヒヤヒヤしています。
私、身長のわりに手が小さいので、新型だと指がつるというか......キーボードに届かないんですよね。だからコイツが死んだら私も死にます。
もう5、6年くらいは使っているので、壊れたらどうしようってヒヤヒヤしています。
私、身長のわりに手が小さいので、新型だと指がつるというか......キーボードに届かないんですよね。だからコイツが死んだら私も死にます。
──死なないでください(笑) それでは、pixiv に投稿した作品のなかで、一番印象に残っているものを教えて下さい。
オリジナルを描いてみようと思い立って描いたイラストですね。すごく楽しかったのを覚えています。
今とは絵柄が違うし、男かっていう首の太さだし、めっちゃ強そうでゴリラみたいな娘なんですけど(笑)
オリジナルを描けるようになったころから、お仕事をいただけるようになって、デビューしました。
オリジナルを描けるようになったころから、お仕事をいただけるようになって、デビューしました。
──村上さんは非常に筆が速いですが、時短の秘訣はなんですか?
ショートカットの活用じゃないでしょうか。あとは迷ったらとりあえず試すこと。
デジタルだから、いくら手数を進めてもすぐ戻れますしね。
ライブペインティングをしていても「手数が多いですね」って言われます。とりあえずやってみて、それから調整していくっていう感じです。
デジタルだから、いくら手数を進めてもすぐ戻れますしね。
ライブペインティングをしていても「手数が多いですね」って言われます。とりあえずやってみて、それから調整していくっていう感じです。
──描いていて楽しいパーツはありますか?
うーん、工程によりますね。線画だったら髪が楽しいし、塗りは肌が楽しい。
仕上げは目が好きです! 最後にハイライト入れまくったんねん!って。
仕上げは目が好きです! 最後にハイライト入れまくったんねん!って。
工程によってそれぞれ好きなところがあるっていうのも、筆の速さに繋がってるんだと思います。「あの作業をやりたいから頑張ろう!」って考えられるので。
あと、クリスタ、Photoshop、クリスタと、工程によってソフトを切り替えまくるのもいいのかもしれません。ずっと同じソフトだと飽きちゃうんです。「このソフトはこのツールが楽しいから使おう!」みたいに、おもちゃを選ぶ感じで楽しんでいます。
あと、クリスタ、Photoshop、クリスタと、工程によってソフトを切り替えまくるのもいいのかもしれません。ずっと同じソフトだと飽きちゃうんです。「このソフトはこのツールが楽しいから使おう!」みたいに、おもちゃを選ぶ感じで楽しんでいます。
制作環境も仕事のリズムも、猫の影響はとても大きい
──作業中についやってしまうクセや、逆に絶対にやらないと決めていることはありますか?
クセについては無自覚なんですが、作業中に効果音をつけているらしいです。
ストローク中に「シュッシュッ」と言ったり「ヒューッ」と口笛を吹いたり……。Skypeしていた友だちに言われて知りました......。
やらないと決めていることはとくにないですね。むしろ、作業が行き詰まったら、解消するために何でもやります。私の場合、ずっと座っていてよくなることはまずないので、散歩に行ったり猫と遊んだりして気分転換します。
ストローク中に「シュッシュッ」と言ったり「ヒューッ」と口笛を吹いたり……。Skypeしていた友だちに言われて知りました......。
やらないと決めていることはとくにないですね。むしろ、作業が行き詰まったら、解消するために何でもやります。私の場合、ずっと座っていてよくなることはまずないので、散歩に行ったり猫と遊んだりして気分転換します。
──ちなみに、すぐ集中できるタイプですか?
朝、席に着いたとき「いける日」か「ダメな日」かわかります。
最初にペンを持つかマウスを持つかで決まるんです。マウスを持っちゃったら、その日は諦めて無限ネットサーフィン(笑)。もちろん作業もするんですが、目標をそんなに高く設定しないようにします。
ただ、コーヒーを淹れるとスイッチが入りますね。
それから作業中はメガネを変えるので、コーヒーとメガネによってタイムカードを押す、という感覚です。
最初にペンを持つかマウスを持つかで決まるんです。マウスを持っちゃったら、その日は諦めて無限ネットサーフィン(笑)。もちろん作業もするんですが、目標をそんなに高く設定しないようにします。
ただ、コーヒーを淹れるとスイッチが入りますね。
それから作業中はメガネを変えるので、コーヒーとメガネによってタイムカードを押す、という感覚です。
──手足の疲労や、肩こりなどはありますか?
座りっぱなしということもあって、ふくらはぎがパンパンにむくみます。寝るときにメディキュットをはいたり、散歩に行ったりして解消しています。
肩こりはひどいんですが、作業のせいではなくて……。実は、寝るときに猫が左肩に乗ってくるせいなんです。
肩こりはひどいんですが、作業のせいではなくて……。実は、寝るときに猫が左肩に乗ってくるせいなんです。
この間、整体に行ったとき「右肩は使って凝っているみたいですが、左肩はなにかに耐えたままじっとしていなきゃいけない状況ですか?」って言われて、整体師さんってすごいと思いました。
──猫の重みに耐えているわけですね(笑) 肩に乗ったまま動かないんですか?
あんまり動かないですね。この子は私を寝かしつける!という使命感に燃えてて、朝方まで作業していると布団のほうに行って「うおーうおー」って鳴くんです。「もう寝る時間や!」って感じで。夜もたいてい寝かしつけようとしてきますね。
──不規則な生活リズムのなかで、バロメーターの役割を果たしているんですね。制作環境にも猫の存在は影響していますか?
猫の毛を掃除しやすい環境が大切ですね! だから床にはあまり物を置かないようにしています。
実は、作業デスクが斜めになっているのも猫のせい(笑) 斜めにしないと、液晶タブレットとモニターの間に挟まって『進撃の巨人』みたいに顔を出してくるんですよ!
実は、作業デスクが斜めになっているのも猫のせい(笑) 斜めにしないと、液晶タブレットとモニターの間に挟まって『進撃の巨人』みたいに顔を出してくるんですよ!
それから、猫が「抱っこして」って寄ってきたら休憩タイムにしています。数時間に一度やって来るので、リズムができて助かっています。この子がいなかったら、ずっと休憩せずに仕事をしてるかも……。
──イラストレーターが猫を飼うのはおすすめですか?
仕事のリズムも作ってくれるし、一緒にいると癒やされるので本当におすすめしたい! よっぽど自己管理ができている人か、実家ぐらしじゃない限り、イラストレーターが飼うなら、犬より猫だと思います。
犬は飼い主を主軸に考えるし、毎日の散歩が必要なのに、イラストレーターはなかなか構ってあげることができないのでかわいそうです。猫は自分が主軸なので、遊びたいときだけこっちに来るという(笑)
犬は飼い主を主軸に考えるし、毎日の散歩が必要なのに、イラストレーターはなかなか構ってあげることができないのでかわいそうです。猫は自分が主軸なので、遊びたいときだけこっちに来るという(笑)
──現在の制作環境で、改善したい部分はありますか?
ディスプレイですね。アームで繋いでいるんですが、重くてこれ以上持ち上がらないんです。でも、もう少し高い位置にないと、体勢がしんどくて......。
──ディスプレイの質にこだわりはありますか?
Retinaディスプレイのように、発色がとくに綺麗なものは使わないようにしています。自分の絵自体が綺麗だと錯覚してしまうんですよ。ごく普通のディスプレイでも綺麗だと思える絵を描かないとダメなので、なんのクセもない一般的なものがいいですね。
©原作:ふじま美耶・漫画:村上ゆいち/アルファポリス
──これから制作環境を構築していく人へのアドバイスをお願いします。
机はシンプルなのがベストです。板と棒だけくらいの方が、拡張性が高くていいですよ。自分でアームをつけるとか、つけ足しや取り外しがどんどんできます。
──最後に今後の活動について教えてください。
マンガを担当している『異世界で『黒の癒し手』って呼ばれています』の単行本第2巻が発売されています。
それからライトノベル系だと、ファミ通文庫『100ゴールドショップ『ウサギ屋』』、GA文庫『ログインボーナスでスキルアップ 〜寝て起きて成り上がる〜』、ダッシュエックス文庫『僕らはリア充なのでオタクな過去などありません(大嘘)(仮)』のイラストを担当しました。
それからライトノベル系だと、ファミ通文庫『100ゴールドショップ『ウサギ屋』』、GA文庫『ログインボーナスでスキルアップ 〜寝て起きて成り上がる〜』、ダッシュエックス文庫『僕らはリア充なのでオタクな過去などありません(大嘘)(仮)』のイラストを担当しました。
──ありがとうございました!
猫と暮らす機能美と癒やしの制作環境
村上ゆいちさんの制作環境は、シンプルながらも随所にカスタマイズの跡が見られて、”かゆいところに手が届く”もの。また、デスクのすぐ横には猫が登るための台が設置されていて、猫が過ごしやすいように配慮されたスペースでもありました。
そんな機能美と”猫愛”が、村上ゆいちさんの制作環境へのこだわりのようです。
この連載では、クリエイターたちの素顔や個性を垣間見ることのできる“デスク”にスポットを当て、彼らがどのように素敵な作品を生み出していくのか取材していきます。
引き続き、次回もお楽しみに!
そんな機能美と”猫愛”が、村上ゆいちさんの制作環境へのこだわりのようです。
この連載では、クリエイターたちの素顔や個性を垣間見ることのできる“デスク”にスポットを当て、彼らがどのように素敵な作品を生み出していくのか取材していきます。
引き続き、次回もお楽しみに!